彗星の如く登場した「Kagi Translate」がGoogle翻訳やDeepL翻訳を凌ぐと話題なので使ってみた【Kagi Translate】
翻訳やテックの世界で「何やら凄いのが出たぞ」と話題になった「Kagi Translate」。
一般の方にはあまり認知されていないようですが、性能がすごいようなので見てみます。
概要
Kagi Translateとは
なんと「Kagi」の名前の由来は日本語の「鍵」(開発者は日本人ではないようですが・・・)で、発音は「カーギー」らしいです。ただ、鍵が由来なので、日本人的にはカギと呼んでしまっても問題ないように思います。
公式による説明文は以下の通りです。
Kagiでは、ユーザーが自信と安心を持って探索し、学び、交流できる、親しみやすいインターネットの実現を目指しています。私たちの使命は、ウェブを人間らしくし、よりアクセスしやすく、倫理的で、個人のニーズを中心に据えることです。私たちは、デジタルの旅においてユーザーに知識と理解を与えることを目的とし、情報提供と教育に力を入れています。
ちなみにこちら、英文を実際にKagi Translateを使って翻訳した文章です。(以下、Kagi翻訳と呼びます。)
翻訳できるなら日本語の文章も自前で用意しておいてよ、と言いたいところですが、そこは公式的にはKagiで翻訳してということなのでしょう。
公式キャラクター
なんだかやさぐれた感じの犬が公式キャラクター。ちょっぴり可愛い気もします。
名前はないらしく、今のところ"Doggo"(ドッゴ=日本語でいうワンコに相当)と呼ばれているみたいです。
最高精度を誇るという主張
公式Xのポストによれば、なんとGoogle翻訳やDeepL翻訳を超える品質とのこと。
もう翻訳で迷うことはありません。今日、Kagi Translateを発表します。244の言語で優れた翻訳を提供します!
Google翻訳やDeepLよりも高品質、追跡なし、そして無料です✨
特徴
品質もさることながら、「追跡なし」「無料」という点はかなり優れているように感じます。
生成AIでもそうですが、無断で情報を学習に使われたり、抜き取られていたりするケースが山のようにありますので、安全面を含めても、Kagi翻訳は今後シェアを伸ばすこと間違いなしと考えられます。
使ってみた
使い方
使い方は簡単で、下記リンクにアクセスするだけです。
ちなみにWebサイトを翻訳する方法もありますので、そちらは後述します。
例1
実際にGoogle翻訳やDeepL翻訳と比較してみます。
まずは誰もが知るオバマ演説「Yes We Can」の最後の部分を翻訳。
原文
Yes, we can.
America, we have come so far. We have seen so much. But there is so much more to do. So tonight, let us ask ourselves, if our children should live to see the next century, if my daughters should be so lucky to live as long as Ann Nixon Cooper, what change will they see? What progress will we have made?
This is our chance to answer that call. This is our moment. This is our time, to put our people back to work and open doors of opportunity for our kids; to restore prosperity and promote the cause of peace; to reclaim the American dream and reaffirm that fundamental truth, that out of many, we are one; that while we breathe, we hope. And where we are met with cynicism and doubt and those who tell us that we can’t, we will respond with that timeless creed that sums up the spirit of a people: Yes, we can.
Thank you. God bless you. And may God bless the United States of America.
Kagi翻訳
はい、私たちはできます。
アメリカ、私たちはここまで来ました。私たちは多くのことを見てきました。しかし、まだやるべきことはたくさんあります。今夜、私たちの子供たちが次の世紀を見ることができるなら、私の娘たちがアン・ニクソン・クーパーのように長生きできるなら、彼らはどんな変化を目にするでしょうか?私たちはどれだけの進歩を遂げるでしょうか?
これはその呼びかけに応えるチャンスです。これは私たちの瞬間です。これは私たちの時です。私たちの人々を再び働かせ、子供たちのために機会の扉を開くために;繁栄を取り戻し、平和のための大義を促進するために;アメリカンドリームを取り戻し、その根本的な真実を再確認するために、多くの中で私たちは一つであること;私たちが呼吸する限り、私たちは希望を持つこと。私たちが冷笑や疑念に直面し、私たちにはできないと言う人々に出会ったとき、私たちは人々の精神を要約するその時代を超えた信条で応えます:はい、私たちはできます。
ありがとうございます。神のご加護がありますように。そして、神がアメリカ合衆国を祝福しますように。
Google翻訳
はい、できます。
アメリカ、私たちはここまで来ました。多くのことを見てきました。しかし、やるべきことはまだまだたくさんあります。ですから今夜、自問してみましょう。もし私たちの子供たちが次の世紀まで生きられたら、もし私の娘たちがアン・ニクソン・クーパーと同じくらい長生きできたら、どんな変化を目にするでしょうか。私たちはどんな進歩を遂げているでしょうか。
今こそ、その呼びかけに応えるチャンスです。今こそ私たちの瞬間です。今こそ、国民を再び仕事に就かせ、子供たちにチャンスの扉を開き、繁栄を取り戻し、平和の大義を推進し、アメリカンドリームを取り戻し、大勢の人たちから一つになるという根本的な真実を再確認し、息をしている限り希望を持つ時です。そして、皮肉や疑い、私たちにはできないと言う人たちに出会ったとき、私たちは国民の精神を要約した不朽の信条で応えます。はい、私たちにはできます。
ありがとうございます。神のご加護がありますように。そして、神がアメリカ合衆国を祝福してくださいますように。
DeepL翻訳
そうだ。
アメリカよ、我々はここまで来た。多くのことを見てきた。しかし、まだまだやるべきことはたくさんある。だから今夜、私たちは自問しよう。もし私たちの子供たちが次の世紀を見るまで生きていたら、もし私の娘たちがアン・ニクソン・クーパーのように長生きできるほど幸運だったら、彼らはどんな変化を見るだろう?私たちはどのような進歩を遂げているだろうか?
今こそ、その呼びかけに応えるチャンスなのだ。今がその時だ。国民を仕事に戻し、子供たちにチャンスの扉を開き、繁栄を取り戻し、平和の大義を推進し、アメリカン・ドリームを取り戻し、基本的な真実を再確認するのだ。そして、シニシズムや疑念にさらされ、私たちには無理だと言う人たちがいても、私たちは民族の精神を要約する不朽の信条で応えよう: はい、私たちはできます。
ありがとう。神のご加護を。そしてアメリカ合衆国に神の祝福があらんことを。
比較してみて
“Yes, we can."の部分はどの翻訳もイマイチですが、内容に関しては特段差がないように感じられます。
若干気になったのは、Kagi翻訳はセミコロンが多い点。
原文通りにセミコロンを付けていますが、日本語にセミコロンは不要なので、そういった点ではGoogle翻訳が最も翻訳としての質が良いように感じます。
例2
Yes We Canは中学生でも読める文章なので簡単すぎたかなと思い、Federal Reserve Press Releaseの最新リリース文を取ってきました。
経済の専門用語が多数含まれており、日本語でも難しいと感じる方が出てくるような文章です。
原文
Federal Reserve issues FOMC statement
Recent indicators suggest that economic activity has continued to expand at a solid pace. Since earlier in the year, labor market conditions have generally eased, and the unemployment rate has moved up but remains low. Inflation has made progress toward the Committee’s 2 percent objective but remains somewhat elevated.
The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run. The Committee judges that the risks to achieving its employment and inflation goals are roughly in balance. The economic outlook is uncertain, and the Committee is attentive to the risks to both sides of its dual mandate.
In support of its goals, the Committee decided to lower the target range for the federal funds rate by 1/4 percentage point to 4-1/2 to 4-3/4 percent. In considering additional adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will carefully assess incoming data, the evolving outlook, and the balance of risks. The Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage‑backed securities. The Committee is strongly committed to supporting maximum employment and returning inflation to its 2 percent objective.
In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee’s goals. The Committee’s assessments will take into account a wide range of information, including readings on labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.
Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Thomas I. Barkin; Michael S. Barr; Raphael W. Bostic; Michelle W. Bowman; Lisa D. Cook; Mary C. Daly; Beth M. Hammack; Philip N. Jefferson; Adriana D. Kugler; and Christopher J. Waller.
Kagi翻訳
連邦準備制度はFOMC声明を発表
最近の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大し続けていることを示唆しています。今年の初めから、労働市場の状況は一般的に緩和され、失業率は上昇しましたが、依然として低い水準にあります。インフレは委員会の2%の目標に向けて進展していますが、依然としてやや高い水準にあります。
委員会は、長期的に最大雇用と2%のインフレを達成することを目指しています。委員会は、雇用とインフレの目標を達成するリスクがほぼ均衡していると判断しています。経済の見通しは不確実であり、委員会はその二重の使命の両側に対するリスクに注意を払っています。
目標を支援するために、委員会は連邦基金金利の目標範囲を1/4ポイント引き下げ、4.5%から4.75%に設定することを決定しました。連邦基金金利の目標範囲に対する追加の調整を検討する際、委員会は新たに入ってくるデータ、進化する見通し、リスクのバランスを慎重に評価します。委員会は、国債および機関債、機関のモーゲージ担保証券の保有を引き続き減少させます。委員会は、最大雇用を支援し、インフレを2%の目標に戻すことに強くコミットしています。
適切な金融政策の姿勢を評価するにあたり、委員会は新たに入ってくる情報が経済の見通しに与える影響を引き続き監視します。委員会は、リスクが出現し、委員会の目標の達成を妨げる可能性がある場合には、適切に金融政策の姿勢を調整する準備があります。委員会の評価は、労働市場の状況、インフレ圧力とインフレ期待、金融および国際的な動向に関する幅広い情報を考慮に入れます。
金融政策の行動に投票したのは、ジェローム・H・パウエル議長、ジョン・C・ウィリアムズ副議長、トーマス・I・バーキン、マイケル・S・バール、ラファエル・W・ボスティック、ミッシェル・W・ボウマン、リサ・D・クック、メアリー・C・デイリー、ベス・M・ハマック、フィリップ・N・ジェファーソン、アドリアナ・D・クグラー、クリストファー・J・ウォラーです。
Google翻訳
連邦準備制度理事会が FOMC 声明を発表
最近の指標は、経済活動が引き続き堅調なペースで拡大していることを示唆しています。今年初め以来、労働市場の状況は概ね緩和しており、失業率は上昇しましたが、依然として低い水準にあります。インフレ率は委員会の 2% 目標に向けて前進していますが、依然としてやや高い水準にあります。
委員会は、長期的には最大雇用と 2% のインフレ率を達成することを目指しています。委員会は、雇用とインフレの目標を達成するためのリスクはほぼ均衡していると判断しています。経済見通しは不透明であり、委員会は二重の使命の両側に対するリスクに注意を払っています。
委員会は、目標をサポートするために、フェデラル ファンド金利の目標範囲を 1/4 パーセント ポイント引き下げて 4.5 ~ 4.7/4 パーセントにすることを決定しました。フェデラル ファンド金利の目標範囲の追加調整を検討するにあたり、委員会は入ってくるデータ、変化する見通し、およびリスクのバランスを慎重に評価します。委員会は、引き続き国債、政府機関債、政府機関住宅ローン担保証券の保有を減らす。委員会は、最大限の雇用を支援し、インフレ率を 2 % の目標に戻すことに強くコミットしている。
金融政策の適切な姿勢を評価するにあたり、委員会は、経済見通しに対する入ってくる情報の影響を引き続き監視する。委員会は、委員会の目標達成を妨げるリスクが生じた場合、適宜金融政策の姿勢を調整する用意がある。委員会の評価では、労働市場の状況、インフレ圧力とインフレ期待、金融および国際情勢に関するデータなど、幅広い情報を考慮する。
金融政策措置に賛成票を投じたのは、ジェローム H. パウエル議長、ジョン C. ウィリアムズ副議長、トーマス I. バーキン、マイケル S. バー、ラファエル W. ボスティック、ミシェル W. ボウマン、リサ D. クック、メアリー C. デイリー、ベス M. ハマック、フィリップ N. ジェファーソン、アドリアナ D. クグラー、クリストファー・J・ウォーラー。
DeepL翻訳
米連邦準備制度理事会(FRB)がFOMC声明を発表
最近の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆している。年初来、労働市場の状況は総じて緩和しており、失業率は上昇したが、依然として低い水準にある。インフレ率は委員会の目標である2%に向けて前進しているが、依然としてやや高い水準にある。
委員会は、長期的には最大限の雇用とインフレ率2%の達成を目指している。委員会は、雇用とインフレの目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると判断している。経済見通しは不透明であり、委員会はその両面のマンデートに対するリスクに注意を払っている。
その目標を支持するため、委員会はフェデラルファンド金利の目標レンジを1/4%ポイント引き下げ、4-1/2から4-3/4%とすることを決定した。フェデラルファンド金利の目標レンジの追加調整を検討する際、委員会は、入ってくるデータ、進展する見通し、およびリスクのバランスを注意深く評価する。委員会は、財務省証券、政府機関債および政府機関住宅ローン担保証券の保有残高の削減を継続する。委員会は、最大限の雇用を支援し、インフレ率を2%の目標に戻すことに強くコミットしている。
金融政策の適切なスタンスを評価する際、委員会は、経済見通しに関する入ってくる情報の意味を引き続き監視する。委員会は、委員会の目標達成を妨げる可能性のあるリスクが出現した場合、金融政策のスタンスを適宜調整する用意がある。委員会の評価には、労働市場の状況、インフレ圧力とインフレ期待、金融および国際情勢など、幅広い情報が考慮される。
金融政策決定に賛成したのは、ジェローム・H・パウエル議長、ジョン・C・ウィリアムズ副議長、トーマス・I・バーキン、マイケル・S・バー、ラファエル・W・ボスティック、ミシェル・W・ボウマン、リサ・D・クック、メアリー・C・デイリー、ベス・M・ハマック、フィリップ・N・ジェファーソン、エイドリアナ・D・クグラー、クリストファー・J・ウォラーの各氏。
比較してみて
Google翻訳のみが1段落目の"economic activity has continued to expand"という部分で「引き続き」という表現を使っており、これは勝敗決したかと思いましたが、3段落目の"the Committee decided to lower the target range for the federal funds rate by 1/4 percentage point to 4-1/2 to 4-3/4 percent."で「フェデラル ファンド金利の目標範囲を 1/4 パーセント ポイント引き下げて 4.5 ~ 4.7/4 パーセントにすることを決定」というとんでもない数値を出したので、個人的にはアウト。
ちなみにDeepL翻訳も「委員会はフェデラルファンド金利の目標レンジを1/4%ポイント引き下げ、4-1/2から4-3/4%とすることを決定」と表現してしまっています。
“4-1/2 to 4-3/4 percent"は見慣れない表現かもしれませんが、米国では帯分数表記が主流のようで、正しくはKagi翻訳の「目標を支援するために、委員会は連邦基金金利の目標範囲を1/4ポイント引き下げ、4.5%から4.75%に設定することを決定しました」です。
ただ、Kagi翻訳にも「おや?」と感じる部分があります。
例えば、3段落目の"The Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage‑backed securities."を「委員会は、国債および機関債、機関のモーゲージ担保証券の保有を引き続き減少させます。」と訳していますが、「モーゲージ担保証券」は一般的な表現ではありませんよね。
自然に訳すなら「委員会は引き続き、米国債および政府機関債および政府機関の住宅ローン担保証券の保有を縮小します。」となるはずで、この点はGoogle翻訳が最も優れていそうです。(DeepL翻訳は米国債を財務省証券と訳しており、正しいは正しいのですが一般的な表現ではありませんよね。)
その他、細かい点はどの翻訳もいろいろとツッコミどころがありますが、概ねKagi翻訳が最も優れているという主張は間違っていないと感じます。
Webサイトを翻訳
Webサイトを翻訳するには、URLの先頭を「https://translate.kagi.com/」とすればOKです。
例えば、「https://www.wikipedia.org/」であれば、「https://translate.kagi.com/www.wikipedia.org/」または「https://translate.kagi.com/https://www.wikipedia.org/」とすれば翻訳してくれます。
※翻訳するURLのhttps://部分はあってもなくても良いようです。アクセス時に自動で補完してくれます。
実際にKagi翻訳したWikipediaにアクセスしてみました。
※アクセスしたのは英語版の「https://en.wikipedia.org/wiki/Main_Page」。
うまく翻訳されていますね。
Google Chromeの拡張機能などが登場すれば、完全な革命となりそうです。
みなさんもぜひ使ってみてください。
【Reference】
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