WordPress界隈が今大変な騒動になっているらしい【WordPress】共同創設者Matt氏対WP Engine

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WordPressの共同創設者であるMatt Mullenweg氏が「WP EngineはWordPressではない」という記事を投稿したことを皮切りに、WordPress界隈がかなり危うい状況になっているようで、日本語の記事もあまり出回っていないようなのでザックリまとめてみました。

時系列

2024年9月21日:Matt氏が「WP EngineはWordPressではない」という記事を投稿

WP Engineは、米WP Engine社が提供するWordPressのホスティングサービスのことです。

記事の冒頭でMatt氏は、WP Engineが公式なWordPressの一部だと誤解されていることに対し、その思い込みを利用して利益を上げていると批判しています。

次に、「コンテンツは神聖なもの」と触れた上で、WordPress はコンテンツ管理システムであり、データ保護におけるユーザー保証の中核と表現するほど、リビジョン機能(一言で表すなら編集履歴機能のことです)の重要性を説いています。

そして、「WP Engine はこれを無効にしている」とWP Engineを厳しく糾弾しています。
具体的には、編集履歴をデータベースに保存するにはコストがかかり、そのコストをコンテンツ保護に使いたくないため、リビジョンを無効にしているのだと訴えています。

また、他のホスティングサービスでこれを無効にしているところはないため、WP Engineはユーザーに劣悪な体験を提供して、より多くのお金を稼ごうとしているのだと説明しています。
いかに強い表現かを理解できるよう、以下に元記事から少し引用します。

[原文]

What WP Engine gives you is not WordPress, it’s something that they’ve chopped up, hacked, butchered to look like WordPress, but actually they’re giving you a cheap knock-off and charging you more for it.

This is one of the many reasons they are a cancer to WordPress, and it’s important to remember that unchecked, cancer will spread.

[日本語訳]

WPエンジンが提供するのはWordPressではない。それはWordPressに見えるように切り刻んだり、ハッキングしたり、捏造したりしたもので、彼らは安いコピー商品を提供し、それに対して高い料金を請求しているのだ。

これは、彼らが WordPress にとっての癌である数多の理由の 1 つであり、放置すれば癌は広がるということを覚えておくことが重要だ。

最後に、今すぐにWP Engineを解約しなさいと婉曲的に表現することで記事は締められています。

2024年9月23日:WP EngineがMatt氏の発言に対して停止通告書を送付

先のMatt氏の記事に対して、WP Engineは「AutomatticとそのCEOであるMatt Mullenwegに対し、WP Engineに対する虚偽、有害、中傷的な発言の停止と撤回を要求する、いわゆる「cease and desist」書簡をAutomatticに送付した」と公表しました。

AutomatticはWordPressの運営元です。
また、"cease and desist"とは、「停止通告書」のことで「知的財産権の侵害行為を行っている者に対して,侵害行為を直ちにやめ,そして永久に行わないことを求める内容のもの」をいうようです。(引用:片山法律会計事務所
「差し止め通知書」みたいな表現の方がしっくりくるかもしれません。

ポストにはメール内容が添付されていますが、主な焦点となる箇所は「偽情報拡散や名誉毀損による不当な圧力」になると思われます。
気になる方は下記リンクから読んでみてください。

https://wpengine.com/wp-content/uploads/2024/09/Cease-and-Desist-Letter-to-Automattic-and-Request-to-Preserve-Documents-Sent.pdf

2024年9月24日:AutomatticがWP Engineに対して停止通告書を送付

WP EngineがAutomatticに停止通知を送付した翌日、AutomatticはWP Engineに独自の停止命令書を送り、WP EngineがWordPressやWooCommerceなどのいくつかの商標を侵害していると述べました。

商標以外の部分はMatt氏が最初に投稿した記事内容とほとんど同じ方向性の内容です。

https://techcrunch.com/2024/09/25/legal-ping-pong-in-the-wordpress-world-continues-automattic-now-sends-wp-engine-a-cease-and-desist-letter-alleging-trademark-infringement/

2024年9月25日:WP EngineはWordPressへアクセス禁止に

Matt氏はWP EngineのWordPress.orgへのアクセスを禁止しました。

以下、記事の一部を引用します。

[原文]

What I will tell you is that, pending their legal claims and litigation against WordPress.org, WP Engine no longer has free access to WordPress.org’s resources.

(中略)

Why should WordPress.org provide these services to WP Engine for free, given their attacks on us?

[日本語]

私が言いたいのは、WordPress.org に対する法的請求と訴訟が保留中であるため、WP Engine は WordPress.org のリソースに無料でアクセスできなくなったということです。

(中略)

WordPress.org が私たちを攻撃しているのに、なぜ WordPress.org は WP Engine にこれらのサービスを無料で提供しなければならないのでしょうか?

2024年9月27日:10月1日までWP Engineのアクセス禁止に執行猶予

アクセス禁止措置により、WP Engineの顧客が、サイト更新、プラグインディレクトリ、テーマディレクトリ、Openverseの動作ができないことに不満を感じているということで、Matt氏は10月1日を期限として一時的にアクセス禁止措置を解除することにしました。

2024年10月1日:WP Engineは、プラグインやテーマの更新のための解決策を独自に展開したと発表

WP Engineは「ソリューションが完全に展開され、世界中のお客様に対して通常のワークフロー・プラクティスが回復されたこと」を発表しました。
一時的か恒久的かは不明ですが、WordPressなしでも運用できるようにしたということですね。

2024年10月2日:WP Engineが、AutomatticとMatt氏を相手取り訴訟提起

WP Engineは、AutomatticとMatt氏に対して、恐喝と権力乱用の罪で訴訟を起こしました。

訴訟提起に際してWP Engineは、AutomatticとMullenwegがWordPressのオープンソースプロジェクトを制約なく実行し、開発者にソフトウェアをビルド、実行、変更、再配布する自由を与えるという約束を守っていないと非難しています。

また、同社は「過去10日間のマット・マレンウェグの行動は、重大な利益相反とガバナンスの問題を露呈し、野放しにしておくと、その信頼を破壊する恐れがある。WP Engineは、従業員、代理店パートナー、顧客、およびより広範なWordPressコミュニティを保護するために、これらの主張を追求する以外に選択肢はない」と述べています。

https://techcrunch.com/2024/10/02/wp-engine-sues-automattic-and-wordpress-co-founder-matt-mullenweg/

2024年10月4日:159人の従業員がAutomatticを退職

Matt氏はAutomatticの従業員全体の約8.4%にあたる159人が、Matt氏の行動に同意しないことを理由に退職金オファーを受け取ったことを明らかにしました。

オファーは「アラインメントオファー」と名付けられ、その内容は「2024年10月3日(木)の20:00より前に退職した場合、Automatticへの再雇用資格が剥奪されることなどを条件に、30,000ドルまたは6か月分の給与のいずれか高い方を受け取る」というものでした。

Matt氏はこれについて、「だいぶ刺さった」と複雑な感情をにおわせながらも、「1億2600万ドルを断って滞在した人々と一緒に働くことに興奮している」と前向きにコメントしています。

2024年10月5日:Matt氏「WordPress.orgは私が所有している」

Matt氏は「WordPress.orgは私個人のものだ」とインタビューで語りました。

この発言が、WP Engineとの争いとともに、非営利のオープンソースプロジェクトたるWordPressと、営利商標を管理するAutomatticとの境界をさらに曖昧にし、長年彼を支持してきたオープンソースコミュニティに不確実性の影を落としているとして、波紋を引き起こしています。

https://www.theverge.com/2024/10/4/24262232/matt-mullenweg-wordpress-org-wp-engine

2024年10月9日:WordPressログイン時にWP Engine関係ないことを確認するチェックボックスが登場

WordPress.orgのログイン画面に突如として、「I am not affiliated with WP Engine in any way, financially or otherwise.」(私は金銭的にもその他の面でも WP Engine とは一切関係ありません。)という確認チェックボックスが登場しました。

https://gigazine.net/news/20241011-i-am-not-affiliated-with-wp-engine-in-any-way

2024年10月11日:新プロジェクトFreeWPが登場

「WordPressコミュニティとより広範なエコシステムに捧げる新たなニュースメディア勢力」として、WordPress開発コミュニティの元メンバーVinny Green氏がFreeWPをローンチしました。(公式によるとフォークではないとされています。)

https://gigazine.net/news/20241011-freewp-from-wordpress

https://freewp.com

2024年10月12日:Advanced Custom FieldsをSecure Custom Fieldsにフォーク

Matt氏は、「Advanced Custom Fields (ACF)」を新しいプラグイン 「Secure Custom Fields (SCF)」 にフォークしたと発表しました。

「WP Engineによる法的な攻撃が原因であり、他のプラグインでは発生する可能性は低い」とコメントしていますが、一部からは「乗っ取りだ」などの批判が出ているようです。

まとめ

現在のところ、WP Engineユーザー以外への影響は軽微?と思われますが、今後どうなるかは未知数です。

ただACFについては、WordPressユーザーなら知らない人はいないほどの知名度であり、名前が突然変わったことで、日本でも混乱が出てきているようです。

時系列上には入れられませんでしたが、WP Engineが利益追求ばかりしているという話も具体的な数字で出ているので、Matt氏の批判も理解できるところですが、可能ならWordPressの持続的な発展のために納得できるところでお互い譲歩してほしいところです。

WordPressのユーザーイベントであるWordCamp US 2024で、マレンウェッグ氏はステージに上がるなり、「AutomatticとWP EngineはWordPressの持続的な成長を支えるリソースを提供する」という誓約に言及し、「Automatticは週3900時間を投資しているのに対して、WP Engineはわずか40時間しか投資していない」と批判。さらに、「AutomatticとWP Engineは5億ドル(約720億円)前後と、ほぼ同じ規模の収益をあげているにもかかわらず、WordPressへの投資額には注目するに値するほどの差がある」と述べました。

引用元:GIGAZINE

以上です。
追記・訂正があれば適宜行います。

【Reference】

https://ma.tt

WordPress

Posted by このめ