暇空茜氏の糾弾するNPO法人キッズドアを擁護しようと思い調べたらかなりグレーだった件

2024年7月24日X

(※2024年8月29日追記:なんだか知らぬ間に反響を呼んでいたみたいで怖くなったので補足です。「かなりグレー」などと題していますが、記事の最後でも述べている通り、あまりちゃんと精査できていません。誰を批難したいわけでもなく、単純に「これおかしいのでは」という問題提起から議論が進めばいいなと思って記事を書きました。)

昨今X(旧Twitter)で、なにやらNPO法人キッズドアが不正を行っているだの、いや行っていないだのと騒がれているようで、普段Xを拝見しない私ですが興味をもったため少し調べてみました。

前段

NPO法人とは

そもそもNPO法人(Non-Profit Organization)とは特定非営利活動法人のことだというのは周知かと思われます。
しかし、「非営利」という言葉から「利益を得ない」と連想してしまう方が多いようで、誤った認識をもたれたままだと困るので、ひとまずこの部分を整理します。

進次郎構文となりますが、「非営利」とは「営利でない」ことをいいます。
これはすなわち「利益を分配しない」ことを意味します。

一般の方には馴染みがないと思いますが、誤解を恐れずにいえば、会社というのは誰かが所有し、誰かが動かし、誰かが働くことで成り立ちます。
これらはそれぞれ「出資者」「経営者」「従業員」と呼ばれる人たちです。誰一人欠けても成立しません。

この中で、出資者についてより詳しく説明すると、「会社にお金を出すから利益出たら分けてチョ」といってお金を出してくれる人のことをいいます。
これは株式会社であれば株主のことであり、配当という形でリターンを得ようとする人のことです。

話を戻して、NPO法人の出資者について考えると、NPO法人は「出資者に利益を分配しない」会社であると理解できます。
何がいいたいかといえば、NPO法人は利益を分配しないだけでボランティア団体ではないので、利益を上げてもいいし、利益目的の事業を行ってもいいのです。

とはいえ、主な事業目的は特定非営利活動に限定され、宗教活動や政治活動を主たる事業目的としないなどの法的な制約があることも事実です。
ちょっと勉強した人が「NPO法人はボランティア活動しかできない」みたいなことを言い出すのは、特定非営利活動しか事業目的にできないという点を大げさに表現したものであり、実際には上述したように利益を分配しない会社というのがNPO法人の理解としては適切だと思われます。

暇空茜氏の発言

Xを拝見しているとこのような発言が見られました。
恐らくこちらが発端だったのかなと思われます。

キッズドアは3月精米の米(店舗なら5月末頃で廃棄処分)をこれから貧困家庭に送ろうとしてて、野菜ジュースも賞味期限8月で注意しないといけない代物で(ハガキで隠れてる手紙)
韓国売れ残り美酢見切り品とかの在庫処分実質脱税寄付
これを送料もかけて8,000円の食料ですとかいってるのアホでしょ

via: https://x.com/himasoraakane/status/1815699750492213671

言い方はともかくとして、発言内容を見るに「実質タダのものに8,000円をかけているのはおかしい」という趣旨かと思われます。
たしかに、廃棄予定のものや賞味期限間近のものが多いので、ここでは触れられていない人件費や送料を加味しても、高すぎるのではないかと感じるのは仕方がない金額ではあります。

あるいは、以下のような発言も見られました。

キッズドア
1931世帯に寄付金1303万円(1世帯6750円)で食品配りました!!

配ったのは寄付品から
コメ4kg、そば、切り餅かレトルトカレー2パック
あと「賞味期限が切れた冷凍食品を同意のもと送りました

はああああああああああああああああああ???
これで6750円だあああああああ!?!?!?

via: https://x.com/himasoraakane/status/1815743048929976603

たしかに、こちらも同様に高いと感じてしまうかもしれません。

このあたりがなぜ高いかは、暇空茜氏自身も紹介している以下のnoteを参照してください。
本記事では別の視点で問題を追求します。

本題

暇空茜氏の指摘

先述の通り、NPO法人は利益を追求しても問題ないのです。
したがって、利益=収入ー費用で計上されますから、収入(売上のことです)を多く、費用を少なく追求すること自体には何らの問題もないのです。

XがNPO法人で賑わっていることを知ったとき、このあたりを誤解されているのだなと思っていたので誤解を解くための記事を書こうと思ったのですが、先に引用した通り、これは「費用を高く」取っていますね。
ここで、「利益を追求するのであれば、費用は少なくすべきところ、あえて高く設定しているのは、どこかで横領まがいのことが発生しているからだ」という指摘が生まれるわけです。

憶測の域を出ませんが、「得意先が多く利益を得られるように高い価額を設定した」「取引先を1つ挟んで中抜きをしている(転売物を買っている)」のような可能性が挙げられます。

でもこれって、完全に憶測でしかありませんよね。
疑いがあるのは事実としても、確固たる証拠がない以上、むやみに責めるのもよくないのではないでしょうか。

そう思いまして、当該法人の決算書を覗いてみることにしました。

キッズドア基本情報

NPO法人は決算を公開する義務がありますから、決算書はどなたでもご覧になれます。
下記ページにて公開されています。

決算書を見る前に従業員数を把握しておきましょう。大事な指標です。

2023年11月1日時点で、正職員 102名・ボランティア 1,059名がいるようですね。
ボランティアは無給のはずですので、正社員102名で考えていきます。

キッズドア決算書

決算書というと、だいたいどこの法人格も同じように「損益計算書」と「貸借対照表」さえ抑えておけば良いので、ここでもこの2つを見ていきます。

NPO法人の損益計算書は、株式会社でみられる「売上高」「売上原価」・・・「当期純利益」のような項目ではなく、「経常収益」と「経常費用」の2つ(もしある場合は「経常外収益」と「経常外費用」も含めて4つ)で構成されます。
若干馴染みがないかもしれませんが、それぞれ収入と費用だと認識していただければ大丈夫です。

決算概要

キッズドアの決算をザックリまとめるとこんな感じでした。(単位:円)

経常収益 1,371,556,710
経常費用 1,299,137,145
経常外費用 763,976
当期正味財産増減額(当期純利益) 71,309,589
次期繰越正味財産額(内部留保) 317,395,597

※括弧書きは本来不適切ですが、分かりやすいと思ってあえてつけています。

これだけを見ると、「えっ、利益が7,000万円も出てる!こんなの絶対おかしい!!」という方が出てくるかもしれませんが、NPO法人なんてだいたいこんなものです。
たしかNPO法人は日本に5~7万社くらいあるはずですから、気になった方はぜひ調べてみてください。

問題はこの内訳です。

収益

経常収益を見ると、助成金だけで5億8,000万円ありますね。
このうち、民間(〇〇財団など)からは2億6,000万円、国庫からはなんと3億2,000万円も助成金が出ています。

私は助成金について詳しくないので、この金額が適切かどうか判断はできませんが、個人的には額が大きすぎるのではないかと思います。
ただ、国自らができないことをNPO法人に委託することを考えれば、仕方ない側面もあるのかもしれません。

請負業務収入4億8,000万円も気になりますが、気力不足のためここでは割愛します。

費用

やはり一番の問題はここですね。

まず事業費の給料手当に4億5,000万円が出ているのは、社員約100名をふまえると、年収400万円相当ですので極めて妥当です。(管理費の人件費6,200万円込みでも、金額として問題ないでしょう。)
人件費関連はすべて妥当かと思われます。

その他経費のうち、旅費交通費や通信運搬費も、キッズドアでは年間6,000回もの学習会を開いているようですので、見逃せる範囲ではないかと思われます。(どこで学習会を行っているのかが分かりませんが、定期圏内であれば多すぎるとは思います)

ではどこが問題なのか。

私個人的には、「支払助成金 2億3,800万円」「支払手数料 4,500万円」です。

支払助成金というのは、他の組織や個人に対して助成金を支払う際の勘定科目ですので、5億8,000万円の助成金を受けながら、キッズドアは2億3,800万円の助成金を出していることになります。
これっておかしいですよね?
民間なり国庫なり、キッズドアを介さず直接助成すれば良いものを、わざわざキッズドアを介しています。

それこそ先ほどの暇空茜氏の憶測と変わりませんが、かなり疑いが深まってしまいました。

支払手数料も高すぎます。これは金融機関の手数料や専門家への報酬にかかる金額ですが、それだけで4,500万円にのぼるでしょうか。
かなり不可解であるといえます。

まとめ

時間の都合でかなり雑な記事になってしまいました(本当はもっと細かく確認したかったです)が、基本的に人件費等は問題ないものの、かなり気になる部分がいくつか発見されました。

NPO法人の非営利事業は非課税(法人税等の話)であるが故に、脱税やマネーロンダリングの温床とされています。

もちろん中にはちゃんとしたNPO法人があることは声高に叫ばなければいけませんが、だからこそNPO法人自身にも身の潔白を証明できるだけの準備をしてほしいと思います。

行っている事業の社会的評価だけではなく、事業スキームの正当性まで包括的に世間へ発信する責任を問われる時代が近づいてきているのではないでしょうか。

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Posted by このめ