2024年、銀行株に注目すべき理由

今年は銀行株に注目が集まっています。

以下では、銀行の基本的な理解を含めて、個人的に銀行株に注目する理由を説明してみます。(素人です。備忘録としても扱っているため、冗長な記述が多いです。間違ったことを言っている可能性もありますのでご容赦ください。)

銀行の収益構造

銀行の基本的な収益構造は、金利差を通じて利益を上げる(利ザヤで稼ぐ)ことにあります。
一般的に知られているのは、預金金利と貸出金利との差異による金利収益(利ザヤ)ですが、本質的には「預かる」および「貸し出す」業務において生じる金利差が主要な収益源となります。

<主な貸し借り>
・預かる :預金(普通・定期など)、コール市場(銀行同士の貸し借り)
・貸し出す:融資、債権運用(有価証券・社債・国債など)

預金金利は、政策金利(=短期金利)と非常に密接な関係を持ちます。
政策金利とは、銀行の日銀に対する預金の金利であり、預金金利は政策金利に連動します(定義は様々ですが、ここではこのように扱うこととします)。
例えば、政策金利が1%だとすると、銀行が日銀へ100万円預ければ1万円の利息が得られます。これに対して、個人が銀行へ100万円預けた際の金利が2%だとすると、銀行は個人へ2万円の利子を支払わねばならず、銀行からみれば日銀から得た1万円より個人へ支払う2万円の方が多いため1万円(1%)分を損することになります。
また、預金金利は高ければ高いほど、一般に顧客が引き寄せやすくなります。
そのため、基本的には預金金利は政策金利よりも低い金利が設定され、高いほど顧客が集まることから、理論上では預金金利は政策金利に極めて近い値となるのです。(このため、政策金利は預金金利の「誘導目標」と呼ばれます。)

一方で貸出金利は企業や個人へお金を貸し出す際の金利であり、基本的には預金金利と同様に政策金利の影響を強く受けますが、国債金利を参考に設定されることが一般的です。(厳密にはもっと多くの要素があります。)

日本では現在マイナス金利政策が導入されており、日銀預金の一部にマイナス金利が設定されています。
このため、マイナス金利が一部であるとはいえ、人件費等のコストを含めて考える「総資金利ザヤ」がマイナスになる「逆ザヤ」と呼ばれる現象が発生しました。

以上より、銀行の主たる収益は政策金利と長期金利(=国債金利)によって大きく左右されることがわかります。
この利ザヤで得た収益を「金利収入」と呼び、これが日本の銀行において依然として主要な収益源であると言えます。

一方で、欧米は非金利収入と呼ばれる収益源が多くを占めます。ATMキャッシング手数料やクレジットカード手数料をはじめ、M&A仲介手数料、投信・保険販売手数料などがこれにあたります。
日本でも近年この比重が大きくなりつつありますが、欧米と比較するとまだ発展途上といえます。

この他、金融自由化や国際競争力向上を目的とした2021年の銀行法改正により、事業会社への100%の出資やコンサル業などが可能となりました。

日銀の動向

前述の通り、銀行の収益は政策金利と長期金利に大きく左右されます。
日銀はこれまで、政策金利についてはマイナス金利政策、長期金利についても利回りが概ね0%程度になるように誘導水準が設定され、日銀が大規模な国債買い入れを実施していました。これはイールドカーブ・コントロール(=YCC)と呼ばれ、いわゆる「異次元緩和」の根幹をなす要素です。

ここで、日銀の国債買い入れと利回り低下について補足すると、以下のような構図で説明されます。

・「国債は元本と利子が決まっている」→「日銀が国債買い入れる」→「国債価格が上昇する」→「利子も返済される元本も変わらないため、利回りが低下する」

例えば、1000万円で金利1%(利息10万円)の国債があるとします。日銀が国債を買い入れて1005万円に価格が上がった場合、利息は10万円のままで、返済される元本は1000万円のため、差益は5万円になり、実質的な利回りは約5%まで低下します。
ちなみに、これは国債に限らず債権一般にいえることです。

本題へ戻ります。
日銀は近年、長期金利上昇を容認しつつあります。また、国債残高約1,000兆円の半分以上を現在日銀が保有していることからも、これ以上の国債買い入れが難しいことも事実です。ここから、今後ますます長期金利が上昇することが期待されます。

一方で政策金利はマイナス金利政策の撤廃(利上げ)が検討されているものの、長期金利ほど大きく上昇するとは考えられていません。
なぜなら日銀や日本経済30年来の悲願たるデフレ脱却、すなわち持続的なインフレは、政策金利の引き上げによって実現から遠のく可能性があるからです。

一般に政策金利が引き上げられると、これに伴って貸出金利も上昇し、企業や個人による借入が控えられ、資金の流動性が落ちることで、資金需要が減少、社会全体の購買意欲が低下し、結果的に物価が下落すると考えられています。

そもそもマイナス金利政策が導入された大きな理由の一つは「デフレ脱却」です。
銀行が日銀へお金を預けず、かわりに融資を行うことを奨励し、企業や個人が積極的に借り入れる環境をつくることで、経済に活力をもたらすことが期待されました。しかし、これにもかかわらずデフレ圧力はなかなか解消されず、結果的にマイナス金利政策が継続されています。

しかしながら、近年は海外の物価上昇による原価高騰や景気回復による需要増加などから、日本経済にも一定のインフレ圧力が生まれています。実際に2022年の消費者物価指数は前年比で2.5%上昇し、2023年は3%以上上昇するとみられているため、この数年だけでいえばデフレは概ね脱していると判断されます。

このような背景から、マイナス金利政策の解除が2024年内に行われることは確実視されていますが、デフレ回帰を避けたい日銀としては着実に政策金利を上げたいはずです。すなわち、マイナス金利解除後はゼロ金利政策で様子を見るのではないかと思われます。

2024年、銀行の動向予想

前述の通り、長期金利上昇の機運が高まりつつある一方で、マイナス金利解除後はゼロ金利(あるいはゼロに近い水準の金利)が一定期間定着するのではないかと考えられます。

長期金利上昇や政策金利改善といった好材料の中で、銀行は従来の低金利環境での収益悪化からの脱却、利差拡大による収益改善が期待されています。これにより、銀行株に対する市場の期待が高まっています。

しかし、政策金利の上昇によるジレンマも懸念として存在します。先述した通り、政策金利を引き上げると、経済全体において資金の流動性が低下し、消費や投資が抑制される懸念があります。これが進むと、銀行株への市場の期待も影響を受ける可能性があります。

また、国債残高が膨大であり、これ以上の国債買い入れが難しいとされている状況も鑑みると、銀行は金利差以外の収益源を開拓する必要があります。これには非金利収入やデジタル領域での新規事業展開が含まれ、銀行株の評価にも大きく影響を与える可能性があります。

総じて、日本の銀行株においては日銀の金融政策が大きな注目を浴びています。金利の変動やデフレからの脱却に伴う政策の調整は、銀行業界だけでなく市場全体に影響を及ぼすと考えられます。

所感

考慮すべきポイントは多いものの、銀行株に注目が集まっていることは事実であり、日銀がマイナス金利を解除することで銀行株が好転することは間違いないと考えられます。

銀行株は多くがPRB1倍割れで、未だに割安な状態です。地銀はともかく、メガバンク級の銀行は海外収益も極めて大きく、構造改革により店舗統廃合、人員削減、DX推進などにより経費削減が進んでおり、近年は好調な業績が続いています。さらに、銀行法改正によるコンサルティングなど銀行業務以外への事業拡大も期待されていることから、今後の成長にも期待が高まります。

米国国債金利、為替レート、ネット銀行やグローバル金融企業の動向など、実際には複合的な要因に注意しなければならないものの、総じて銀行にとって追い風となることが多いため、銀行株に対して楽観的に捉えて問題ないのではないかと思われます。

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Posted by このめ