5%ルールって?株券等の大量保有の状況等に関する開示制度について詳しく解説・まとめ

今回扱う内容は、株券等の大量保有の状況等に関する開示制度(通称:5%ルール)についてです。

概要

財務局による説明

5%ルールについて、財務局のHPには以下のように記述されています。

5%ルールの目的は、大量保有報告書により株券等の保有状況を公開させることで、市場の公正性、透明性を高めるとともに、投資者の保護を一層徹底することにあります。

我が国の金融商品市場においては、経営参加、取引関係の強化等さまざまな動機で、企業の株券等を大量に取得するケースが多数見受けられますが、このような場合、株価が乱高下することが多く、こうした事実に関する十分な情報を持たない一般投資家が不測の損害を被るおそれがあります。このため、株券等の大量保有の状況に関する情報が広く一般投資家に開示されるような制度が必要と考えられ、平成2年12月から本制度が導入されました。

財務局HP:https://lfb.mof.go.jp/tokai/kigyou/tairyou/tairyo1.htm

概要欄の記述を引用してきたのですが、目的の説明に終始しており、どういった仕組みなのかよく分かりませんね。
ここから先は噛み砕いて説明します。

分かりやすく説明

5%ルールとは、「全体株式数のうち5%以上を取得した人は、大量保有報告書を提出してね」というルールのことです。

厳密には、「金融商品取引所に上場している法人が発行者である株券等の保有割合が5%を超えている者(大量保有者)は、約定日の翌日から5日以内大量保有報告書を提出しなければならない。また、大量保有報告書を提出後、株券等保有割合が1%以上増加または減少した場合、または大量保有報告書に記載すべき重要な事項に変更があった場合には、変更内容等を記載した変更報告書を提出しなければならない。」というルールです。
これは、株券等の大量保有の状況の開示に関する内閣府令により規定されています。

目的

先ほどの財務局HPの引用にも記載がありましたが、本ルールの目的は「市場の公正性や透明性を高め、投資者の保護を徹底する」ことです。

市場で株式が大量に取引されると株価が乱高下しますので、一般投資家が予期せぬ損害を被る前に、大量保有に関する情報を開示しましょうという制度が導入されました。

対象

ここでは対象となる有価証券と大量保有者について説明します。

対象有価証券

大量保有報告書の対象となる有価証券は、金融商品取引所に上場している法人が発行者である株券等です。

具体的には、以下のような例が挙げられます。すべて上場企業発行のものです。

  • 株式(ただし議決権のないものは除く)
  • 新株予約権証券(通称:ワラント)、新株予約権付社債(通称:ワラント債) など

ちなみに、ETFや自己株式は5%ルールの対象ではありません。(昔は自己株式も対象でした。)

大量保有者

対象有価証券の保有割合が5%を超えている者を大量保有者と呼びます。
保有者には、所有名義に限らず、次のような者が該当します。

  • 自己又は他人の名義をもって株券等を所有する者
  • 売買その他の契約に基づき株券等の引渡請求権を有する者
  • 金銭の信託契約等に基づき、発行者の株主として議決権を行使することができる権限を有する者で、当該発行者の事業活動を支配する目的を有する者
  • 投資一任契約その他の契約又は法律の規定に基づき、株券等に投資をするのに必要な権限を有する者

つまるところ、所有名義にかかわらず、実質的な保有者に該当すれば、その保有割合が5%を超えた時点で大量保有者となります。

ちなみに、「大量保有者」というと1名のみを表すように聞こえますが、実際には共同保有者がある場合は、保有割合は合算して判断されます。
共同保有者は、本人と共同して議決権を行使することを同意しているような者や、夫婦等共同保有者とみなされる者を指します。

保有割合

保有割合は以下の式で計算されます。

(自己保有分の株式数+自己保有分の潜在株式数)÷(発行済株式等総数+自己保有分の潜在株式数)

共同保有者がある場合は、以下の式になります。

(自己保有分の株式数及び潜在株式数+共同保有者分の株式数及び潜在株式数)÷(発行済株式等総数+自己保有分及び共同保有者分の潜在株式数)

ここでいう潜在株式数とは、普通株式への転換請求権等が全て行使されたときの株式数を指します。
ややこしいかもしれませんが、保有する新株予約権などが実際に行使された場合の株式数で数えていると考えてください。

義務内容

大量保有報告書

大量保有者は、約定日の翌日から5日以内に、内閣総理大臣に大量保有報告書を提出しなければなりません。
実務的には、提出者の住所地(所在地)を管轄する財務局長に、EDINETを通じて提出を行う必要があります。

また、大量保有者は当該株式の発行者に対して、大量保有報告書の写しを送付する義務があるのですが、EDINETにより提出した場合は、発行者に対する写しの送付義務が免除されますので、こちらの義務は今やほとんど意味をなしていません。

変更報告書

大量保有者は、大量保有報告書を提出後、株券等保有割合が1%以上増加または減少した場合、または大量保有報告書に記載すべき重要な事項に変更があった場合には、約定日の翌日から5日以内に、内閣総理大臣に、変更内容等を記載した変更報告書を提出しなければなりません。

こちらの提出も大量保有報告書と同様に、実務的には、財務局長に対してEDINETを通じて行う必要があります。

訂正報告書

大量保有報告書または変更報告書の記載に誤りがあったり、記載が不十分である場合には、訂正報告書を提出しなければなりません。
訂正報告書は、どの報告書の訂正かを明らかにし、訂正事項について、訂正前・後がわかる形で記載します。

その他

縦覧

大量保有者から提出された大量保有報告書や変更報告書は、EDINETで提出後直ちに縦覧可能です。

EDINET EDINETの閲覧サイトです。有価証券報告書、有価証券届出書、大量保有報告書、公開買付届出書等の開示書類を閲覧できます。 disclosure2.edinet-fsa.go.jp

特例報告

証券会社、銀行、信託銀行、保険会社、投信会社、投資顧問会社など、日常の営業活動として大量の株券等の売買を行っている機関投資家については、事務負担等を考慮し、報告頻度等を軽減する措置が図られています。
これを「特例報告」と呼びます。(先に説明したのは「一般報告」です。)

機関投資家が大量保有する場合、保有目的が純投資で、保有割合が10%以下であれば、都度ではなく基準日に報告すれば良いという趣旨の制度です。
この要件さえ満たせば2週間に1度(基準日)の報告で良いことになっています。
※基準日は、第2月曜日および第4月曜日(または第5月曜日)、または各月の15日および末日のいずれか。

ただし、保有割合が10%を超えた場合、特例報告は認められず、一般報告をしなければなりません。

もう一つの5%ルール

一般的な5%ルールというと上述した内容になりますが、実は5%ルールと呼ばれるものはもう一つ存在します。

独占禁止法による「5%ルール」

公正取引委員会のHPに以下のような記述があります。

銀行業又は保険業を営む会社による他の国内の会社の議決権の取得又は保有については、銀行又は保険会社による事業支配力の過度の集中等を防止し、公正かつ自由な競争を促進する観点から、法第11条により、その総株主の議決権の5%を超えて保有等することが禁止されている。

公正取引委員会HP:https://www.jftc.go.jp/dk/kiketsu/guideline/guideline/11guideline.html

細かい話をすると長くなりますが、簡単にまとめると「銀行は他の国内の会社の議決権の5%超、保険会社は他の国内の会社の議決権の10%超を取得・保有できない」ことが独占禁止法第11条に規定されており、これも5%ルールと呼ばれます。

あらかじめ公正取引委員会の認可を受けた場合は、例外的に5%を超えて議決権を取得・保有できるなど、細かい規定が多いので、興味のある方は公正取引委員会HPを参照してください。

独占禁止法第11条の規定による銀行又は保険会社の議決権の保有等の認可についての考え方 | 公正取引委員会 www.jftc.go.jp

近年、このルールを緩和しようという動きが活発化しているので、頭の片隅に置いておくと将来役に立つかもしれません。

銀行規制緩和で新興育成 設立10年以上にも5%超出資 金融庁 リスクマネー供給を後押し – 日本経済新聞 金融庁は銀行グループによる事業会社への出資規制を緩和する。現在は投資専門子会社を通じて設立10年未満の企業に限り5%超の出 www.nikkei.com

おわりに

いかがでしたでしょうか。
今回は、5%ルールについて網羅的にまとめてみました。

どなたかのお役に立てれば幸いです。それでは。

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Posted by このめ