直近の金融機関インサイダー取引など不祥事まとめ(2024年11月1日)金融庁・東証・三井住友信託・野村證券
10月半ばから現在にかけて、金融機関による不祥事が相次いで取り沙汰されています。
「またか」と思われる方も多いでしょうが、「前のやつ何だっけ?」となることもしばしば。
今回は直近の不祥事をザックリとまとめてみました。
金融庁出向の裁判官によるインサイダー取引疑惑
概要
(10月19日付)
金融庁へ出向中の裁判官が、TOB情報を基にインサイダー取引をした疑いがあるというニュース。
金融庁・裁判官・インサイダー取引というパワーワードの連続がかなり衝撃的で、「裁判官が金融庁へ出向することがあるのか」などの感想も交えながら、多くの方の印象に残るニュースとなりました。
ちなみに日経新聞によると、若手裁判官に多様な知識や経験を身につけさせるため、最高裁は行政機関や民間企業に出向する制度を設けているとのこと。
記事引用
金融庁に出向中の30代の裁判官が、職務を通じて知った企業のTOB=株式公開買い付けの情報をもとに、インサイダー取引をした疑いがあるとして、証券取引等監視委員会から強制調査を受けていたことが関係者への取材でわかりました。
関連記事
NHK:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241019/k10014613621000.html
日経新聞:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE18DKZ0Y4A011C2000000
朝日新聞:https://www.asahi.com/articles/ASSBM0SPGSBMUTIL00BM.html
東証社員によるインサイダー取引疑惑
概要
(10月23日付)
東証社員が、TOB情報を基にインサイダー取引に関与した疑いがあるというニュース。
金融庁に引き続き、TOB関連のインサイダーかと話題になりました。ただし、こちらは未公表情報を親族に漏らしたという点で若干異なります。
また、「上場部開示業務室」という適時開示情報を事前に知ることができる部署に所属する20代の男性社員への疑惑ということで、東証への信用問題や、上場企業へ法令遵守を指導する立場のコンプライアンス問題など、多くの波紋を呼びました。
記事引用
東京証券取引所の社員がインサイダー取引に関与したとして、証券取引等監視委員会から金融商品取引法違反(取引推奨)容疑で強制調査を受けていたことが明らかになった。市場取引の本丸で起きた情報漏洩と不正取引の疑いは、投資家の信頼を失いかねない。
関連記事
日経新聞:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB231JY0T21C24A0000000/
ブルームバーグ:https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-10-23/SLSABUT0AFB400
テレ東BIZ:https://txbiz.tv-tokyo.co.jp/txn/news_txn/post_305855
三井住友信託銀行の元社員によるインサイダー取引疑惑
概要
三井住友信託銀行の元社員が、インサイダー取引をした疑いがあるというニュース。
11月1日付のニュースで、元社員は同日付となったということで一瞬戸惑った方も多くいたようですが、管理職になっていたので元社員という表現を使っていたというオチでした。
所属部署や取引内容に関する言及はありませんでしたが、金融庁出向裁判官、東証社員と続くだけに、「またか」という声が多く上がりました。
記事引用
三井住友信託銀行は1日、自社の元社員が企業の公開前情報に基づいて株式を売買するインサイダー取引を複数回した疑いが判明したと発表した。社内に第三者を含めた調査委員会を設置し、事実関係の確認や原因分析を進める。再発防止策も策定する。
関連記事
三井住友信託銀行:https://www.smtb.jp/-/media/tb/about/corporate/release/pdf/241101-2.pdf
ブルームバーグ:https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-11-01/SM9GWKDWX2PS00
日経新聞:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB0151Y0R01C24A1000000/
野村證券による長期国債先物の相場操縦に課徴金納付命令
※時系列は前後しますが、内容が長いことと、野村證券が2件あるため、後半を野村でまとめています。
概要
(9月25日付)
いわゆる「見せ玉」と呼ばれる注文によって148万円の利益を得たとして、証券取引等監視委員会が野村證券に対して2176万円の課徴金納付を命じるよう金融庁に勧告したというニュース。
登場人物が多く、一読して理解できた方は少ないのではないでしょうか。
「野村證券が長期国債先物取引で相場操縦を行った」という事実に対して、「証券取引等監視委員会が金融庁に『野村證券は2176万円の課徴金を納付せよと命じろ』と勧告した」と書くと幾文か分かりやすいでしょうか。(かえって分かりにくくしたかもしれません・・・)
違反行為とされたのが、2021年3月9日の取引であったことや、利益が148万円と(長期国債先物市場においては)少額であったことに対して、疑問の声がチラホラと見受けられました。
その後の動向
かなり長くなるので要点だけ書いています。抜け漏れがあったらすみません。
9月27日、鈴木俊一金融相(当時)は閣議後の記者会見で、この件について「極めて遺憾だ」と述べ、「証券会社は市場の公平・透明性の確保に努めなければならない立場だ」と指摘しました。(日経新聞「野村証券の相場操縦、鈴木金融相「極めて遺憾」」)
9月30日、社債の引受主幹事で野村證券を外す動きが相次いでいると日経新聞が報じました。(日経新聞「社債主幹事で野村証券外し 相場操縦で三井住友信託など」)
10月10日、野村證券は法令違反の事実を金融庁に認めたことがわかりました。(ブルームバーグ「野村証、国債相場操縦の法令違反事実認める-金融庁に答弁書提出」)
10月11日、財務省は、野村證券に対して国債市場特別参加者の特別資格を、10月15日から11月14日までの1ヶ月間停止すると発表しました。国債市場特別参加者はプライマリー・ディーラー(PD)とも呼ばれ、その資格により特定入札への参加や、国債市場特別参加者会合に出席して財務省と直接意見交換できるなどのメリットが享受できます。(財務省「野村證券株式会社に対する国債市場特別参加者の特別資格の停止について」)
10月31日、金融庁は野村證券へ10月30日付で2176万円の課徴金納付命令を出したと発表しました。(金融庁「長期国債先物に係る相場操縦に対する課徴金納付命令の決定について」)
また同日、野村證券は課徴金を納付したことと、同証の奥田健太郎社長ら8人が役員報酬の一部を自主返上する内容を含む再発防止策を発表しました。(野村證券「野村證券に対する金融庁による課徴金納付命令について」、野村證券「証券取引等監視委員会による勧告事案にかかる再発防止策について」)
記事引用
証券取引等監視委員会は、野村證券株式会社による長期国債先物に係る相場操縦について検査した結果、下記のとおり法令違反の事実が認められたので、本日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、課徴金納付命令を発出するよう勧告を行った。
関連記事
金融庁:https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2024/2024/20240925-1.html
ブルームバーグ:https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-09-25/SKCXQ1T0G1KW00
日経新聞:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB254XF0V20C24A9000000/
野村證券元社員が強盗殺人未遂と放火の疑いで逮捕
概要
今年7月に広島市の住宅で80代夫婦に睡眠薬を飲ませて放火し、現金約2600万円を奪ったとして、野村證券の元社員が逮捕、強盗殺人未遂・放火の疑いで送検された事件。
業務を通じて顧客の資産状況を把握しており、事件当日に夫婦が現金入りのボストンバッグを自宅に用意していたことから、計画的な犯行とみて操作が進められているようです。
ちなみに容疑者は強盗については認めていますが、殺人と放火については否認しています。
最近は闇バイトによる連続強盗事件が相次いでおり、関連性を示唆するSNS投稿も見受けられました。
記事引用
今年7月、広島市内の住宅に放火し、現金を奪ったとして野村証券の元社員の男が逮捕・送検された事件で、男は別の顧客から預った資金を運用し、そこで生まれた多額の損失を取り返すため現金を盗んだと弁護士に話していることがわかりました。
まとめ
以上の5件とかなりボリューミーでした。
おさらいすると、こんな感じです。
- 金融庁出向の裁判官によるインサイダー取引疑惑
- 東証社員によるインサイダー取引疑惑
- 三井住友信託銀行の元社員によるインサイダー取引疑惑
- 野村證券による長期国債先物の相場操縦に課徴金納付命令
- 野村證券元社員が強盗殺人未遂と放火の疑いで逮捕
こうして見ると、かなりインパクトの大きいニュースが勢揃いですね。
個人的には東証社員のインサイダー取引疑惑が最もやらかしているような気がします。
「金融庁も司法も触れてはならない領域なのだから、金融庁出向裁判官のインサイダーが一番やらかしているのではないか」という声ももちろん理解できますが、株式にあまり触れていない人間が(さらに毎日判例とにらめっこしていたような方が)突如として大金になる情報を毎日目にする環境に置かれてしまったことを考えると、「これくらいバレないだろう」と考えそうであることも納得できるので、市場の元締めたる東証現役社員がインサイダー取引に関与してしまったことの方がインパクトは大きいと考えます。
話が逸れましたが、さすがにここまで不祥事が出てくると、日本市場に対する不信感が後を絶たなくなりそうですので、そろそろお開きにしてほしいところです。
以上です。
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