【将棋研究】ソフト初の升田幸三賞!エルモ囲いの特徴と戦い方を簡単に解説!弱点はノーマル三間飛車!?【エルモ囲い】

将棋研究,将棋

こんにちは、このめです!

4月1日に第47回将棋大賞の選考委員会によって、エルモ囲いが升田幸三賞に選ばれました!
エルモ囲いの升田幸三賞受賞おめでとうございます!

囲い自体は元からあるものの、その再発見にソフトが大きく貢献したことで、ソフトが受賞することが決定したみたいですね。
ソフトの受賞は初であるということで、時代の流れを感じさせられます。

さて、今回はエルモ囲い(elmo囲い)の特徴と戦い方の基本についてちまちまと見ていきます。
【使用ソフト:Kristallweizen NNUE 4.83】

関連記事に「エルモ囲いvs四間飛車」がありますので、こちらも合わせて参照してください!

エルモ囲いの特徴

エルモ囲いは基本的に「対振り飛車用」ですので、ここでは相手を振り飛車(特に四間飛車)と考えて進めていきます。
対居飛車となった場合については、エルモ囲いの戦い方の説明で触れます。

横からの攻めに強い

エルモ囲いを採用する一番のメリットは、ズバリ「横からの攻めに強い」ことです!

対振り飛車の有力な戦型として近年採用されることの多くなってきたエルモ囲いですが、特に左に囲った玉に対して、右から攻めてくる飛車にめっぽう強いことが、その特徴の一つとして数えられます。

以下は振り飛車側の飛車に成られた場合を想定した一例です。(以前の記事で紹介したものです。)

実戦でもどこかで指されていそうな棋譜ですね。
このような例で進行した場合、50手目に飛車を成り込まれても、飛車と玉の近さだけを見れば自陣が危ういように感じられるものの、全体を冷静に見れば、横からの攻めに強いエルモ囲いの固さから相手に有効な手がなく、エルモ側が有利となります。

大駒の交換も問題なし

後で戦い方のところで触れますが、エルモ囲いは性質上、角の交換を積極的に行うことで手を進めていきます。
また先述したように、横からの攻め(特に飛車の攻め)に強いため、飛車を交換したところで、ちょっとやそっとでは囲いが崩れることはありません。

例を見てみましょう。(以前の記事で紹介したものを少し変更したものです。)

あくまでも一例に過ぎませんが、四間飛車側は攻めの銀がやや使えていないのに対して、エルモ側の銀は後退することで守りの銀として機能しています。
56手目で角に攻め込まれ、囲いの金銀を手放してしまいますが、金銀龍3枚のみの攻めですので、龍の利きだけではうまく攻めが繋がりません。(将棋の格言:4枚の攻めは切れない(つまり3枚の攻めは切れる))
また左側に玉の逃げ場所が多いため、一見して危うい状況でも、冷静に指せばうまく逃げることができます。

エルモ囲いの戦い方

銀のドリブルで3筋から突破を目指す

エルモ囲いを使う場合、攻め方はいたってシンプルで、銀が下の画像の矢印のように繰り出せば、たいていの場合はうまくいきます。

3五歩→同歩→同銀で突破を目指す

狙いは簡単で、▲3五歩△同歩▲同銀で既に受けが難しく、△3四歩には▲2四歩△同角▲同銀△同歩▲同飛が厳しい。
したがって、▲3五歩には△3二飛などが最善手となりますが、意外と実戦で振り飛車側が正しい応手を見つけることは難しく、エルモ側が有利となることが多いように思われます。
このあたりの変化は以下の記事が参考になると思われます。

角は自ら交換しにいく

エルモ囲いの戦い方のユニークな点に「自ら角交換をする」ことが挙げられます。

エルモ囲いが横からの攻めに強いというのは既に述べた通りですが、その反面、玉の左側部分がかなり薄くなっていることもお分かりいただけると思います。

ここで、相手から角交換をされた場合、同玉あるいは同金ととる他ありません。
同玉の場合は金銀で強固に固められたエルモ囲いから玉が離れてしまい、王手飛車の筋にも気をつける必要性が出てきます。
また同金の場合は、エルモ囲いの形そのものが乱れてしまいます。

相手から角交換をされた場合

したがって、エルモ囲いで戦う場合、相手が角道を開ければすぐに自分から角交換を挑まなければいけません。

ここまでのみでは、「自ら角交換を迫るのはエルモ囲いの弱点となるのではないか」と思うかもしれませんが、そうであるとは限りません。

例として以下の棋譜を見てみましょう。

実戦的には難しい局面が多いですが、交換した角を設置し直すことで、振り飛車側が薄くなりがちな3三の地点を狙うことができます。

このようにエルモ囲いで角交換後に角で斜めのラインを狙っていく指し方は汎用性が高く、ソフトが最善手として違う手を示していても、実戦的にはこのような指し方で勝ちやすくなることが圧倒的に多いため、特に級位者にはオススメです!

角交換後に狙う斜めのライン

対居飛車戦にも対応可能

相手が飛車を振るかどうかを保留した場合、対応に困る方も多いかもしれませんが、エルモ囲いであれば対居飛車の場合にも応用が可能です。

以下は一例です。

ここでは相手が飛車を振るのをためらった場合を示しましたが、もちろん相手が居飛車であった場合も、エルモ囲いに組むことなく、舟囲いを始め多くの他の囲いや戦法に移ることが可能です。

エルモ囲いを組むには、7八玉から6八銀という流れが必要となりますが、これが他の囲いや戦法とも共通することが多いため、このように自由度が高くなっています。
(そもそも7八玉から6八銀という流れそのものの自由度が高いのではという疑問は、升田幸三賞受賞に免じて目をつむってください。。)

エルモ囲いの短所

どの囲いにも弱点や短所があるように、エルモ囲いにも短所があります。

以下で見ていきましょう。

直上からの攻めに弱い

エルモ囲いは基本的に対振り飛車用の囲いであることから、横からの攻めには強くなっていますが、真上からの攻めには(実戦的には)かなり弱いです。

以下はその一例です。

実際に過去にこのような進行が存在したかどうかは定かではありませんが、一つの例として振り飛車側が右三間飛車に振り直した場合を作ってみました。

ソフト最善手を多く採用して作っていますので、終盤は「ここから勝てるの?」という局面から勝ちに行っていますが、そこは気にせず問題は58手目あたり。
真上からの攻めに明確に弱いとは言えない(むしろ実際には弱くない)ものの、実戦で上からの圧迫するように攻めに勝つのは難しいといえます。

この例の他にも、7六に桂馬を飛ばれると形成が悪くなる場合が少なくありません。
あまり見かけることはないかもしれませんが、エルモ囲いを使いたい方であれば注意しておくべきでしょう。

ふんどしの桂(両取りの桂馬)

左の銀が囲いに参加し攻めに厚みが加わらない

これは囲いを見れば明らかなことですが、エルモ囲いは玉の左側の銀が囲いに参加してしまうことで、攻め駒として活躍できた可能性のある銀が攻めに使えなくなり、攻めに厚みが加わらなくなります。

もっともエルモ囲いを採用する場合は、そのようなことは重々承知の上で、右の銀を繰り出していくことで攻めを繋げるので、短所とは言い難いかもしれません。
また、左の銀が攻めに参加しない代わりに、右の金が攻めに参加することがたまにあります。

対ノーマル三間飛車で有効な手段がなくなる可能性あり

これはしっかりとした研究が進むとエルモ囲いにとって大変なことになる(のではないかと勝手に思っている)のですが、最初からノーマル三間飛車に組まれ、さらに上手く指し回された場合、エルモ囲い側には有効な手段がなくなる可能性があります。

以下で一例を見てみましょう。

エルモ囲い側の攻め方は先に示した通り、銀を使った3筋からの攻めが主となります。
これに対して、振り飛車側が「それならば最初から3筋を飛車で受けておこう」とノーマル三間飛車を採用してきた場合、エルモ側は金駒がほぼ囲いに参加していることもあり、有効な攻めの手段を作りにくくなります。

一部では「ノーマル三間飛車にはエルモ囲いが有力」とする説もあるようですが、私自身の見解ではこれは真逆で「エルモ囲いには(振り飛車では)ノーマル三間飛車が有力」であると思います。
(そもそも私見というには忍びなく、このようにいえる理由はソフトの評価値がそうであることを示しているからです。)

さて、いかがでしたか?

対振り飛車として猛威を振るっているエルモ囲いですが、基本的には戦い方が単純ですので、初心者の方が覚えるのに向いていたり、振り飛車党の方が自分から指してみると案外使えてしまったりすることがあるかもしれません。
非常に面白い戦法ですので、一回は試してみることをオススメします!

また、「どうしても振り飛車でエルモ囲いに勝ちたい!」という方は、ぜひノーマル三間飛車でエルモ側の攻めを咎めてみてください!

今日はここまで。それでは良い将棋ライフを!

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